獲得標高と所要時間から1時間あたりの登坂速度VAMを算出
計算結果は一般的な計算式による目安です。競技のルールや大会・用具の規定により実際とは異なる場合があります。
峠Aを42分、峠Bを1時間8分——長さも勾配も違う登坂を並べても、どちらが濃い走りだったかは分かりません。そこを1本の物差しに揃えるのがVAM(Velocità Ascensionale Media/平均上昇速度)です。「この登り方をあと1時間続けたら標高で何メートル分登れる計算になるか」を表した数字で、単位は m/h。このツールは走行ログから必ず読み取れる獲得標高(m)と所要時間(分)の2つだけで、VAMと参考値の推定パワーウェイトレシオ(W/kg相当)を表示します。峠ごとの記録がバラバラのままだった人ほど、効果を感じやすい指標です。
式そのものは拍子抜けするほど単純で、所要時間を「分」から「時間」に直して割るだけです。
わざわざ1時間あたりに換算するのは、長さの違う登りを同じ土俵に乗せるためです。距離あたりの平均時速だと勾配の差が丸ごと入り込んでしまうのに対し、VAMは上下方向の仕事だけを取り出すため、峠の性格差に左右されにくくなります。
計算例①:獲得標高780m・所要時間52分
時間を換算すると52÷60=0.8667時間。780÷0.8667=900m/h。内訳の推定パワーウェイトは900÷300=3.0 W/kg相当と表示されます。
計算例②:獲得標高650m・所要時間48分
48÷60=0.8時間。650÷0.8=812.5m/h。100以上は整数に丸めて表示されるため画面上は813m/h、推定パワーウェイトは812.5÷300=2.708…で2.7 W/kg相当となります。
よくある組み合わせの計算結果です(本ツールと同じく整数に四捨五入)。自分の登坂が表のどのあたりに落ちるか、目星をつける用途に使ってください。
| 獲得標高\時間 | 30分 | 45分 | 60分 | 75分 | 90分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 300m | 600 | 400 | 300 | 240 | 200 |
| 500m | 1,000 | 667 | 500 | 400 | 333 |
| 900m | 1,800 | 1,200 | 900 | 720 | 600 |
| 1,200m | 2,400 | 1,600 | 1,200 | 960 | 800 |
表の左上(短時間で大きな標高差)は短い激坂を駆け上がったときの数値で、1時間続けられる値ではありません。時間が短いほどVAMは大きく出るため、比べるなら所要時間が近い登坂どうしが原則です。
獲得標高600mの峠を固定して、所要時間だけを変えた場合です。1分縮めたときの伸びしろが、タイムの長短でまったく違うことが分かります。
| 所要時間 | VAM(m/h) | 推定W/kg相当 | 5分遅いときとの差 |
|---|---|---|---|
| 30分 | 1,200 | 4.0 | +171 |
| 35分 | 1,029 | 3.4 | +129 |
| 40分 | 900 | 3.0 | +100 |
| 45分 | 800 | 2.7 | +80 |
| 50分 | 720 | 2.4 | +65 |
| 55分 | 655 | 2.2 | +55 |
| 60分 | 600 | 2.0 | — |
VAMはタイムの逆数に比例するため、変化は直線ではなく反比例のカーブを描きます。60分から55分の5分短縮と、35分から30分の5分短縮では、数値の動き方が3倍以上違う。数字の伸びが鈍っても実力が止まったとは限らないという読み方を持っておくと、記録を続けやすくなります。
内訳に出るW/kg相当は「VAM÷300」という割り切った換算です。この300は、勾配がおおむね7〜10%の登りで機材重量や空気抵抗を平均像として扱ったときの経験的な係数にすぎません。実際には次の要素で簡単にずれます。
つまりこの値は、おおよその領域を掴むための粗い目盛りです。出力そのものを知りたいならパワーメーターの実測が確実で、その用途にはFTP・パワーウェイトレシオ計算が向いています(こちらは1時間持続できる出力と体重の比を直接扱うツールで、VAMのような時間あたりの標高ではなくW単位のパワーが入力です)。パワーの上下動が激しいライドの実質的な重さを評価したい場合は、NP(標準化パワー)と強度係数IFの計算が別の角度から役立ちます(こちらは登坂に限らず、ライド全体のパワー変動をならして強度の比率を出すためのものです)。
Q. サイコンの「獲得標高」をそのまま入れてよいですか?
A. 使えますが、ばらつきの原因になります。多くの機器は気圧センサーで高度を測っており、天候の変化で数十m単位のずれが出ることがあります。また小さなアップダウンを積み上げる仕様の機種では、同じ峠でも記録するたび値が変わります。比較を目的にするなら、起点と頂上の標高差を固定値として毎回使うのが最も安定します。
Q. 途中に下りや平坦がある峠ではどうすればよいですか?
A. VAMは「上がった分」しか見ないため、下りで時間だけが進むと数値が実力より低く出ます。下りを挟まない区間を切り出して計算するか、「下りを含む区間のVAM」として別枠で記録し他の峠と混ぜないでください。
Q. 数値を上げるにはどんな練習をすればいいですか?
A. 適切な負荷や練習内容は、年齢・体力・持病の有無・生活リズムによって大きく異なり、このツールから一律に処方できるものではありません。具体的なメニューは指導者や医療機関など、あなたの状態を直接確認できる専門家の判断に従ってください。走行中や走行後に痛み・強い息切れ・めまい・胸の違和感などがあるときは、記録より中止を優先してください。
Q. 標高が高い山では数値が落ちるものですか?
A. 一般に標高が上がるほど空気は薄くなり、酸素の取り込みという点では不利になります。一方で空気抵抗は減るため、影響の出方は勾配や速度域によって変わります。標高帯の違う峠を同じ列で比べるのは避けてください。
Q. 表示が「—」のままになります。
A. 所要時間が0または未入力だと0で割ることになるため計算されません。分の欄に1以上の数値が入っているか確認してください。1時間15分は「75」と分に直して入力します。