同じ入射条件で材料が変わると、屈折の法則より
sinβ₁ / V₁ = sinβ₂ / V₂
→ β₂ = sin⁻¹( sinβ₁ × V₂ ÷ V₁ )
例:STB屈折角71°、標準横波3230m/s、試験体(アルミ)横波3150m/s → 約67.2°(UTレベル2過去問と一致)。音速が小さい材料では屈折角も小さくなります。計算補助用です。
斜角探触子に刻印された「70°」「60°」「45°」といった屈折角は、STB-A1(鋼)など特定の標準試験片の音速を前提に表示されています。ところが実際に検査する材料の横波音速が標準とわずかでも違えば、被検材内を進む超音波の実際の屈折角は表示値からズレます。屈折角がズレると、ビーム路程(W)から逆算するきずの位置・深さの計算が狂い、合否判定や補修範囲の決定にまで影響します。このツールは、屈折の法則(スネルの法則)に基づき、STB屈折角と2つの横波音速から、試験体内の本当の屈折角を補正計算するものです。UTレベル1〜2の受験勉強で頻出する計算問題の検算にも、現場で異種材料を扱う検査員の確認にも使えます。
くさび(シュー)から被検材へ入る入射条件は、校正時に表示屈折角β₁と標準材音速V₁で固定されています。同じ入射条件のまま材料だけ変わると、屈折の法則により sinβ/V が一定に保たれます。つまり次の関係が成り立ちます。
sinβ₁ / V₁ = sinβ₂ / V₂
これを解くと
β₂ = sin⁻¹( sinβ₁ × V₂ ÷ V₁ )
β₁=表示(STB)屈折角、V₁=標準試験体の横波音速、V₂=試験体の横波音速、β₂=補正後の実屈折角
計算例1(音速が下がる場合・過去問型):β₁=71°、V₁=3230m/s、V₂=3150m/s のとき。sin71°=0.9455 なので、sinβ₂=0.9455×3150÷3230=0.9221、β₂=sin⁻¹(0.9221)=約67.2°。音速が遅い材料では屈折角は小さくなり、表示より約3.8°浅い角度で伝わります。
計算例2(オーステナイト系ステンレス):β₁=45°、V₁=3230m/s、V₂=3100m/s のとき。sin45°=0.7071 なので、sinβ₂=0.7071×3100÷3230=0.6786、β₂=sin⁻¹(0.6786)=約42.7°。約2.3°小さくなります。板厚が厚いほど、この角度差がきず位置の誤差として効いてきます。
計算例3(音速が上がり全反射になる場合):β₁=70°、V₁=3230m/s、V₂=3450m/s のとき。sin70°=0.9397、sinβ₂=0.9397×3450÷3230=1.004。1を超えるため屈折波は成立せず、ツールは「全反射」と表示します。音速の速い材料を高角度探触子で探傷するときに起こりやすい現象です。
代表的な材料の横波音速と、β₁=70°・V₁=3230m/s で校正した探触子を用いた場合の補正後屈折角の目安です(文献値ベースの概算)。
| 材料 | 横波音速の目安 | 表示70°→補正後の目安 |
|---|---|---|
| 炭素鋼(標準) | 約3230 m/s | 70.0°(補正不要) |
| オーステナイト系SUS | 約3100 m/s | 約64.6° |
| アルミニウム合金 | 約3130 m/s | 約65.7° |
| 銅 | 約2260 m/s | 約40.9° |
| 鋳鉄(おおよそ) | 約2200〜2650 m/s | 約40〜52° |
音速の数値はロット・組成・熱処理で変動します。表は傾向をつかむための目安で、正式な評価には個別材料の実測音速を使ってください。
Q. なぜ縦波ではなく横波の音速を使うのですか?
A. 一般的な斜角探傷では、第二臨界角を超えるくさび設計により被検材内を横波(せん断波)が伝わります。屈折角の補正は、実際に伝搬している横波の音速比で行います。縦波斜角探傷を行う場合は縦波音速を使います。
Q. 炭素鋼どうしなら補正は不要ですか?
A. ほぼ不要です。炭素鋼の横波音速差は数十m/s程度で、屈折角への影響は1°未満が普通です。補正が効いてくるのは、アルミ・ステンレス・銅合金など、標準と音速が大きく異なる材料を鋼用校正の探触子で探傷する場面です。
Q. V₁にはいつも3230m/sを入れればよいですか?
A. STB(炭素鋼)で校正したならその値が出発点です。ただし最も正確なのは、使用したSTBで実測した横波音速を入れることです。V₁を取り違えると補正方向が逆になるため、入力時に最も注意したい項目です。
Q. 「全反射」と表示されたらどうすればいいですか?
A. その角度・材料の組み合わせでは横波が伝わりません。屈折角の低い探触子に変える、もしくは縦波斜角や別手法を検討します。設問の検算なら、入力したβ₁またはV₂が現実的でない可能性も見直してください。
Q. 補正後の角度はそのまま探傷図に使えますか?
A. きず位置(深さd、表面距離y)の逆算には補正後のβ₂を使うのが原則です。ただし実機では探触子の実測角度・くさび摩耗・接触状態でも角度はずれるため、最終的にはRB-41などの対比試験片で実測校正した値を優先してください。