N = D² ÷ (4λ) = D²×f ÷ (4×c)
波長 λ = 音速c ÷ 周波数f
(D:振動子直径、f:周波数、c:材料の音速)
例:5MHz・φ20mm・鋼縦波 → N≒84.5mm。Nより遠方が遠距離音場で、きずの定量評価に適します。計算補助用です。
超音波探傷(UT)では、探触子から出た音波が「近距離音場(フレネル領域)」と「遠距離音場(フラウンホーファー領域)」に分かれます。その境界となるのが近距離音場限界距離N(Near-field length)です。Nより手前では音圧が干渉で激しく振動し、同じ大きさのきずでも深さ位置によってエコー高さが大きくばらつきます。逆にN以遠では音圧がほぼ単調に減衰し、きずの定量評価が安定します。
「この探触子で板厚20mmの溶接部を評価していいのか」「2MHzと5MHzのどちらを選ぶべきか」「探触子径を変えるとNはどう動くのか」——こうした探触子選定の悩みに、Nの計算は明確な数値の根拠を与えます。本ツールは振動子径・周波数・材料の音速を入れるだけで、Nと波長λを自動算出します。UT技術者の現場判断、ならびにJIS Z 2305などの資格試験対策の計算練習に役立ちます。
円形振動子の近距離音場限界距離Nは、振動子径Dと波長λを使って次式で表されます。波長λは音速cを周波数fで割って求めます。
この式から、Nは振動子径Dの2乗に比例し、周波数fに比例(波長λに反比例)することがわかります。つまり、振動子を大きくしても周波数を上げてもNは長くなります。
計算例1:φ20mm・5MHz・鋼の縦波(c=5920m/s)
計算例2:φ10mm・2MHz・鋼の縦波(c=5920m/s)
同じ鋼でも、径を2倍・周波数を2.5倍にすると、Nは8.5mmから84.5mmへと約10倍に伸びることが、この2例の比較からはっきり読み取れます。
鋼の縦波探傷における代表的な組み合わせのN(おおよその値、単位mm)です。横波(斜角)や他材料では音速が変わるため値も変わります。
| 振動子径\周波数 | 2MHz | 4MHz | 5MHz |
|---|---|---|---|
| φ5mm | 2.1 | 4.2 | 5.3 |
| φ10mm | 8.5 | 16.9 | 21.1 |
| φ20mm | 33.8 | 67.6 | 84.5 |
| φ28mm | 66.2 | 132.4 | 165.5 |
Q. なぜNより手前は評価しにくいのですか?
A. 近距離音場では振動子の各点から出た波が干渉し、軸上の音圧が極大・極小を繰り返します。そのため同じ大きさのきずでも深さ位置でエコー高さが数dB単位で変動し、面積(大きさ)評価が不安定になります。安定した定量評価はN以遠で行うのが原則です。
Q. 振動子径Dは公称値と有効値どちらを使いますか?
A. 厳密には音響的な有効振動子径が正解です。有効径は公称径よりやや小さいことが多く、公称値で計算するとNは実際よりわずかに長めに出ます。傾向把握なら公称値で十分ですが、精密な評価では有効径の使用を推奨します。
Q. 角形振動子のときは?
A. 本ツールは円形振動子(N=D²/4λ)を前提にしています。角形(矩形)振動子は等価直径に補正係数を掛けて近似する方法(おおむね辺長の長辺側を基準に係数を乗じる)が用いられ、円形式そのままでは誤差が出ます。角形探触子では各メーカーの仕様値や規格の換算式を優先してください。
Q. 周波数を上げればNが伸びて深部まで見えますか?
A. Nは伸びますが、高周波ほど材料中の減衰(散乱・吸収)が大きく、深部到達は逆に悪くなります。N(近距離音場)と減衰(到達深さ)はトレードオフなので、探傷深さと材質の結晶粒度を踏まえて総合的に選びます。
Q. このツールの結果はそのまま合否判定に使えますか?
A. 本ツールの値は探触子選定や試験対策のための概算・目安です。実際の探傷条件の確定や合否判定は、適用規格(JIS・ASME等)と校正試験片による実測に基づき、有資格者が判断してください。