残存放射能 = (1/2)^(経過時間 ÷ 半減期) × 100 %
必要な照射時間の倍率 = 2^(経過時間 ÷ 半減期)
(放射能が減った分だけ、同じ濃度を得るには照射時間を長くします)
例:Co-60を2.5年後 → 約1.4倍(残存72%)。2年後 → 約1.3倍(約30%増)。RTレベル2過去問と一致。計算補助用です。
放射線透過試験(RT)でガンマ線源を使う現場では、「先週は30秒の露出でちょうど良い濃度だったのに、なぜ今日は薄いのか」という場面が必ず起こります。Ir-192(イリジウム192)やCo-60(コバルト60)といった密封線源は時間とともに崩壊して放射能が弱まり、同じ秒数では同じ黒化度(濃度)が得られなくなるためです。この計算機は、線源の半減期と基準日からの経過時間を入れるだけで、いま線源がどれだけ残っているか(残存放射能%)と、前回と同じ写真を撮るために露出時間を何倍に延ばせばよいか(照射時間倍率)を一度に求めます。撮影前の露出秒数の補正、線源の交換時期の見極め、RT2次試験の減衰計算の検算など、現場と受験の両方で使える道具です。
放射能の減衰は指数関数で表されます。基準時の放射能を A₀、経過時間を t、半減期を T とすると、現在の放射能 A と、本ツールが出す2つの値は次のとおりです。
残存放射能 = (1/2)^(t ÷ T) × 100 %
照射時間倍率 = 2^(t ÷ T) = 1 ÷ 残存放射能比
「半減期1回ぶんの時間が経つごとに放射能は半分になる」という意味です。フィルムやIP(イメージングプレート)に与える線量は〈線源の強さ × 露出時間〉で決まるので、線源が半分に弱まれば、同じ線量を得るには時間を2倍にすればよい、という関係になります。
計算例1:Ir-192(半減期74日)を基準日から74日後に使う
t÷T = 74÷74 = 1。残存放射能 = (1/2)¹ × 100 = 50%。照射時間倍率 = 2¹ = 2.0倍。前回30秒で適正だった露出は、今回 30×2.0 = 60秒に延ばす必要があります。Ir-192はわずか74日で半分になるため、毎週の補正が欠かせないことが分かります。
計算例2:Co-60(半減期5.27年)を基準日から2.5年後に使う
t÷T = 2.5÷5.27 ≒ 0.474。残存放射能 = (1/2)^0.474 × 100 ≒ 72%。照射時間倍率 = 2^0.474 ≒ 1.39倍(約+39%)。前回60秒なら今回はおよそ 60×1.39 ≒ 83秒。Co-60は半減期が長いので、年単位でゆっくり延びていきます。
経過時間を「半減期の何倍か(t÷T)」で見ると、線源の種類によらず同じ表で読めます。
| 経過 ÷ 半減期 | 残存放射能 | 照射時間倍率 | Ir-192での目安 |
|---|---|---|---|
| 0.25 | 約 84.1% | 約 1.19倍 | 約 18.5日後 |
| 0.50 | 約 70.7% | 約 1.41倍 | 約 37日後 |
| 1.00 | 50.0% | 2.00倍 | 約 74日後 |
| 2.00 | 25.0% | 4.00倍 | 約 148日後 |
| 3.00 | 12.5% | 8.00倍 | 約 222日後 |
倍率は半減期1回ごとに2倍ずつ増えます。t÷T=3(半減期3回ぶん)まで来ると倍率は8倍。露出が現実的な時間で収まらなくなった頃が、Ir-192では線源更新の一つの目安になります。
| 線源 | 半減期 | 適した板厚の目安(鋼) |
|---|---|---|
| Ir-192 | 約 74日 | 約 10〜70mm |
| Co-60 | 約 5.27年 | 約 40〜200mm |
| Se-75 | 約 120日 | 約 5〜40mm |
| Yb-169 | 約 32日 | 約 1〜15mm(薄肉) |
| Cs-137 | 約 30.1年 | 中厚(現在は使用減少) |
板厚区分はあくまで一般的な目安で、線源強度・線源-フィルム間距離(SFD)・要求画質によって変わります。実際の撮影条件は使用機材の露出線図・社内手順に従ってください。
Q. 照射時間倍率はなぜ残存放射能の逆数になるのですか?
A. フィルムやIPに届く線量は〈線源の強さ × 露出時間〉で決まります。線源が半分(残存50%=比0.5)に弱まったら、同じ線量を得るには時間を1÷0.5=2倍にする、という単純な比例関係だからです。
Q. 基準日からの日数は具体的にどう数えますか?
A. 線源証明書に書かれた強度の検定日(基準日)を起点に、撮影日までの暦日数を数えます。Ir-192なら1〜2週間ごとに数えなおすと露出のズレが小さく保てます。
Q. 経過時間と半減期の単位は合わせる必要がありますか?
A. はい、必須です。両方を「日」または「年」にそろえてください。半減期を年、経過時間を日のように混在させると、t÷T が桁違いになり、まったく違う倍率が出ます。Ir-192は「日」、Co-60は「年」が扱いやすい単位です。
Q. この倍率だけで露出時間を決めてよいですか?
A. 補正は「線源-フィルム間距離(SFD)や板厚・要求濃度が前回と同じ」という前提での話です。SFDを変えると距離の逆2乗則で線量が変わるので、別途その補正が必要です。本ツールは時間減衰ぶんだけを扱う補助計算と考えてください。
Q. 線源はいつ交換すればよいですか?
A. 明確な閾値は規格では決まっていませんが、Ir-192では残存が概ね25〜30%(倍率3〜4倍)を下回り、露出時間が現実的でなくなった頃が現場での更新検討の目安です。実務では作業効率・撮影品質・コストを見て判断します。
本ツールの結果はあくまで概算・目安です。実際の撮影条件・被ばく管理・線源管理は、使用機材の露出線図、社内手順書、放射線障害防止法をはじめとする関係法令、および放射線取扱主任者など有資格者の判断に従ってください。最終的な判断は公的機関・専門家にご確認ください。