露出量は 管電流×時間 に比例し、距離の2乗に反比例します。
mA₁×t₁ / d₁² = mA₂×t₂ / d₂²
→ t₂ = t₁ × (mA₁/mA₂) × (d₂/d₁)²
同じ写真濃度を保つ前提の換算です(線質・フィルムの相反則不軌は考慮しません)。計算補助用です。
放射線透過試験(RT)の現場では、撮影の途中で「管電流を上げたい」「線源-フィルム間距離を変えざるを得ない」といった状況が頻繁に起こります。そのたびに同じ写真濃度を保つには、露出時間をどう変えればよいのか。このツールは、管電流(mA)と焦点-フィルム間距離(SFD)の変更に合わせて、必要な新しい露出時間を一瞬で換算します。露出線図(エクスポージャーチャート)を引き直す前のあたりを付けたいとき、試し撮りの無駄を減らしたいときに役立ちます。
主に使うのは、RT作業者・検査技術者・教育担当者です。JIS Z 3104(鋼溶接継手)やASMEなどの規格撮影で、装置の出力制限・撮影スペース・スループットの都合から条件を組み替える場面は珍しくありません。実機の露出表が手元になくても、相反則(露出量一定)と逆二乗則の2つの物理だけで、おおよその必要時間を見積もれます。
迷いやすいのは距離の取り方です。ここで言う距離は焦点(線源)からフィルム面までの距離(SFD)であって、被写体表面までの距離ではありません。SOD(線源-被写体間)とOFD(被写体-フィルム間)を分けて管理している場合は、その合計=SFDを入れてください。もう一つの落とし穴が単位の混在で、d₁とd₂はcm・mmどちらでも構いませんが、必ず両方を同じ単位で揃えます(比だけが効くため絶対値の単位は結果に影響しません)。
写真濃度は、フィルムに届く放射線量(露出量)でほぼ決まります。露出量は「管電流×時間」に比例し(相反則=ベクレルの相反則)、放射線の強さは距離の2乗に反比例します(逆二乗則)。したがって、同じ濃度=同じ露出量を保つ条件は次のように書けます。
mA₁ × t₁ / d₁² = mA₂ × t₂ / d₂²
これを t₂ について解くと、ツールが実際に使っている式になります。
t₂ = t₁ ×(mA₁ ÷ mA₂)×(d₂ ÷ d₁)²
【計算例1:距離だけを延ばす】 基準が 5mA・距離60cm・露出180秒。鮮鋭度を上げるために距離を80cmへ延ばし、電流は5mAのまま。
t₂ = 180 ×(5÷5)×(80÷60)² = 180 × 1 × 1.78 = 約320秒(5分20秒)。距離を1.33倍にしただけで時間は1.78倍。距離が2乗で効くことが体感できます。
【計算例2:電流を上げつつ距離も延ばす】 基準が 5mA・距離60cm・露出180秒。管電流を10mAに倍増し、距離も90cmへ。
t₂ = 180 ×(5÷10)×(90÷60)² = 180 × 0.5 × 2.25 = 約203秒(3分23秒)。電流倍で時間は半分に縮む一方、距離1.5倍が2乗で2.25倍に効くため、差し引き元の約1.1倍に落ち着きます。
電流を変えない場合、露出時間は距離比の2乗で増減します。代表的な比率をまとめました。
| 距離の変化(d₂/d₁) | 時間の倍率(d₂/d₁)² | 180秒のときの新時間 |
|---|---|---|
| 0.5倍(半分に近づける) | 0.25倍 | 45秒 |
| 0.8倍 | 0.64倍 | 約115秒 |
| 1.0倍(変えない) | 1.00倍 | 180秒 |
| 1.5倍 | 2.25倍 | 405秒(6分45秒) |
| 2.0倍(2倍に離す) | 4.00倍 | 720秒(12分) |
Q. 管電圧(kV)を変えても使えますか?
A. このツールはkVが同じ前提です。kVを変えると線質と透過力が変わり、濃度への影響が露出量・距離だけでは補正しきれません。kVを変更する場合は装置メーカーの露出線図(エクスポージャーチャート)を併用し、最終的には試し撮りで確認してください。
Q. γ線源(Ir-192・Co-60・Se-75など)でも使えますか?
A. 距離による逆二乗補正はそのまま使えます。X線装置のmAの代わりに線源強度(GBq・Ci)を入れ替えれば、同じ露出量一定の考え方が成り立ちます。ただしγ線源は時間とともに減衰するため、撮影日の実効強度(半減期から計算した値)で評価する必要があります。Ir-192なら半減期約74日なので、線源の経過日数も忘れずに。
Q. 距離を変えなければ電流と時間は単純に反比例しますか?
A. はい。距離が同じなら露出量(mA×秒)が一定であればよいので、電流を2倍にすれば時間は1/2、電流を半分にすれば時間は2倍が目安です。露出量(mA・分)はそのまま不変です。
Q. なぜ距離は2乗で効くのですか?
A. 点線源から出た放射線は球状に広がり、距離が2倍になると同じエネルギーが4倍の面積に分散します。単位面積あたりの線量(=フィルムが受ける量)は面積に反比例するので、距離の2乗に反比例します。これが逆二乗則です。
Q. 計算した時間どおりに撮れば必ず同じ濃度になりますか?
A. あくまで目安です。フィルム特性・現像・散乱線・相反則不軌などの実務要因で多少ずれます。本撮影前に試し撮りで濃度を確認し、必要なら微調整するのが確実です。
本ツールの計算結果は撮影条件検討の概算・目安です。実際の合否判定や濃度・きずの評価は、適用する規格(JIS・ASME等)と社内手順書、装置メーカーの露出線図に従い、有資格者の判断で行ってください。放射線の取り扱いは関係法令と管理区域のルールを遵守してください。