電流を流した丸棒の外部(r ≧ 半径)の磁界の強さ
H = I ÷ (2 × π × r) (r は m に換算)
中実丸棒・中空丸棒のいずれも、外部では同じ式になります。
例:I=300A、r=5cm → H ≒ 955 A/m(MTレベル2過去問と一致)。中実丸棒の内部では中心からの距離に比例します。計算補助用です。
磁粉探傷試験(MT)の通電法(軸通電法・プロッド法など、試験体に直接電流を流す方式)では、流した電流の大きさによって試験体まわりにどれだけの磁界ができるかが探傷感度を左右します。「この電流値で十分な磁界が得られているのか」「径の太い丸棒だと表面の磁界はいくらになるのか」「過去問の H=955A/m はどう出すのか」――こうした場面で、電流 I と中心からの距離 r を入れるだけで磁界の強さ H を即座に求められるのがこのツールです。MTのレベル2・レベル3を目指す受験者の計算練習にも、現場で磁化条件を見積もる技術者の確認用にも使えます。
迷いやすいのは r に「半径」を入れるか「直径」を入れるかです。式の r は中心からの距離なので、必ず半径を使います。直径を入れると磁界が半分に出てしまいます。
十分に長い円柱状の導体に電流を流すと、アンペールの法則により、導体を中心とした同心円状の磁界ができます。電流の向きに右ねじを進めたとき、ねじの回る向きが磁界の向きです。導体の外側(r ≧ 半径)での磁界の強さは次の式になります。
H = I ÷ (2 × π × r) (H:磁界の強さ A/m、I:電流 A、r:中心からの距離 m)
中実丸棒でも中空(パイプ)でも、外部ではこの同じ式になります。磁界は電流に比例して強く、距離に反比例して弱くなるのがポイントです。
計算例1(MTレベル2の典型問題):I=300A、表面までの距離 r=5cm=0.05m
H = 300 ÷ (2 × 3.14 × 0.05) = 300 ÷ 0.314 ≒ 955 A/m
過去問でよく問われる値と一致します。電流300Aを丸棒に流し、半径5cmの表面では約955A/mの磁界が得られる、という意味です。
計算例2(細い丸棒に大電流):直径20mm(半径 r=0.01m)、I=1000A
H = 1000 ÷ (2 × 3.14 × 0.01) = 1000 ÷ 0.0628 ≒ 15,900 A/m
半径が小さく電流も大きいので、表面の磁界は非常に強くなります。仮に距離が2倍(r=0.02m)になれば磁界は半分の約7,950A/mです。
| 電流 I | 半径 r=1cm | r=2.5cm | r=5cm |
|---|---|---|---|
| 300 A | ≒4,780 A/m | ≒1,910 A/m | ≒955 A/m |
| 600 A | ≒9,550 A/m | ≒3,820 A/m | ≒1,910 A/m |
| 1000 A | ≒15,900 A/m | ≒6,370 A/m | ≒3,180 A/m |
表からわかるように、同じ電流でも径が太くなる(r が大きくなる)ほど表面磁界は弱くなります。太物を探傷するときに電流を増やす必要があるのはこのためです。
Q. r には半径と直径のどちらを入れますか?
A. 半径です。式の r は「中心からの距離」なので、表面磁界を求めるなら丸棒の半径を入れます。直径を入れると磁界が半分の値になってしまいます。
Q. 通電法で検出できるきずの向きは?
A. 電流を流すと電流に垂直な円周方向の磁界ができます。磁界に直交するきず=電流と平行(軸方向)に伸びるきずの検出に適します。逆に円周方向のきずは検出しにくいので、その場合はコイル法など別の磁化方向を併用します。
Q. 導体の内部の磁界も同じ式で求められますか?
A. いいえ。この式は導体の外側(r ≧ 半径)専用です。中実丸棒の内部では H = I × r ÷ (2 × π × R²)(R は導体半径)となり、中心でゼロ、表面で最大になります。内部探傷ではなく表面探傷が対象なので、通常は表面(r=半径)の値を見ます。
Q. 中空のパイプでも使えますか?
A. はい。導体の外側では中実か中空かによらず同じ式です。ただしパイプの内面の磁界は、内側に別の電流(中心導体法など)を通さない限り通電だけでは十分に立ち上がりません。内面探傷では中心導体法を検討します。
Q. 交流と直流で結果は変わりますか?
A. この式自体は電流値だけで決まるので、入れる I が同じなら計算結果は同じです。ただし交流では表皮効果で磁界が表面に集中し、表面きずの検出に有利になります。一方で内部のきずは検出しにくくなる傾向があります。
本ツールの計算値は条件検討のための概算・目安です。実際の探傷では適用規格(JIS Z 2320 など)と標準試験片による確認を優先し、最終的な合否判断・磁化条件の決定は有資格者・専門機関の判断に従ってください。