屈折角・板厚・路程からスキップ位置を自動計算(UT)
Wは「入射点(0点)からの音の進んだ距離(ビーム路程)」です。探触子の入射点・屈折角は校正値をご使用ください。本ツールは計算補助です。
超音波斜角探傷(UT)で溶接部や鋼板を検査していると、ブラウン管・液晶に出たエコーが「材料のどこにあるきずなのか」を頭の中で幾何計算しなければなりません。探傷器が表示してくれるのは入射点からきずまでのビーム路程Wだけで、現場で本当に知りたい「表面のどこにマーキングするか(Y距離)」「板厚方向で何mmの深さか」「直射でとらえているのか1回反射波なのか」は自分で換算する必要があります。このツールは屈折角θ・板厚t・ビーム路程Wの3つを入れるだけで、その換算を一括で行います。UT2種・3種の受験勉強で式を確認したい人、現場で電卓を叩く前に答え合わせをしたい検査技術者、教育担当者がスキップ位置の説明をするときの数値確認に向いています。
結果には、入射点からの表面距離(Y距離)、板厚で折り返したきずの実深さ、スキップ区分、そして0.5スキップ・1スキップそれぞれの路程と表面距離が出ます。迷いやすいのは「Wは斜辺で、Y距離と深さがその分解」という関係です。Wを直接マーキングに使ってはいけません。
屈折角θで斜めに進む超音波は、ビーム路程Wを斜辺とする直角三角形をつくります。水平成分がY距離、垂直成分が深さです。このツールが使っている式は次のとおりです。
計算例1:屈折角60°・板厚20mm・路程W=30mmのエコー。
Y距離=30×sin60°=30×0.866=26.0mm。深さ=30×cos60°=30×0.5=15.0mm。0.5スキップ路程はt÷cos60°=20÷0.5=40mmなので、W=30mmはこれより短く直射(0.5スキップ以内)。きずは板厚20mmのうち深さ15mmの位置にあり、入射点から表面で26.0mm前方にマーキングします。
計算例2:屈折角70°・板厚12mm・路程W=50mmのエコー。
0.5スキップ路程=12÷cos70°=12÷0.342=35.1mm、1スキップ路程=2×12÷0.342=70.2mm。W=50mmはその間にあるので底面で1回反射した後の反射波です。直射の式ではW×cos70°=50×0.342=17.1mmと板厚12mmを超えてしまうため、折り返して d=2×12−17.1=6.9mmが実深さ。Y距離は50×sin70°=50×0.940=47.0mmとなります。直射と勘違いすると位置を大きく外すので、まずスキップ区分を確認するのが鉄則です。
| 屈折角 | 0.5スキップ路程 t÷cosθ | 1スキップ路程 2t÷cosθ | 0.5スキップ 表面距離 t·tanθ | 1スキップ 表面距離 2t·tanθ |
|---|---|---|---|---|
| 45° | 28.3mm | 56.6mm | 20.0mm | 40.0mm |
| 60° | 40.0mm | 80.0mm | 34.6mm | 69.3mm |
| 70° | 58.5mm | 117.0mm | 55.0mm | 109.9mm |
板厚が変われば値は比例して伸縮します。例えば板厚10mmなら上表の半分、板厚30mmなら1.5倍です。屈折角が大きいほど同じ板厚でもY距離が伸び、探触子を母材から大きく離して当てることになるのが読み取れます。
Q. 深さがマイナスや板厚超になるのはなぜ?
A. 直射の式(W×cosθ)は底面に達するまでの範囲でしか成り立ちません。路程が長く底面で反射した後のエコーは 2t−W×cosθ のように板厚で折り返して考えます。本ツールは自動で折り返して実深さを表示しますが、手計算では1スキップ路程を超えていないか必ず先に確認してください。
Q. Y距離は探触子のどこからの距離ですか?
A. ビームが材料に入る入射点からの水平距離です。探触子前面ではありません。きずをけがくときは「前面から入射点までの距離(入射点距離)+Y距離」で前面基準に直すか、あらかじめ入射点位置を探触子側面にマーキングしておきます。
Q. 屈折角は探触子の表示値(公称45°など)をそのまま入れてよい?
A. 公称値はあくまで目安です。実屈折角は材質・温度・摩耗で数度ずれることがあり、特に70°探触子は角度感度が高く誤差が表面距離に大きく効きます。RB-A2などの標準試験片で実測した屈折角を「指定」で入れるほど精度が上がります。
Q. 直射と1スキップ、どちらで評価すればよい?
A. きずの深さ位置で使い分けます。表面近くのきずは直射、底面近くのきずは1スキップ(反射波)でとらえる方がビームが当たりやすい場合があります。探触子を前後に動かすと同じきずが直射と1スキップの両方でエコーを出すので、両方の路程から位置を求めて一致すれば信頼度が上がります。
Q. 曲率のある配管やノズルにも使える?
A. このツールは平板(直角三角形)モデルです。配管の周方向探傷など曲率の影響が大きい対象では、表面距離・深さに補正が必要になります。平板近似が成り立つ範囲の概算としてお使いください。