逆二乗則で線量率・安全距離・露出時間を計算
点線源・空気中(散乱・遮蔽なし)を前提とした目安です。実際の被ばく管理は法令・線量計・有資格者の管理に従ってください。
放射線透過試験(RT)の現場では、「ガンマ線源から何メートル離れれば、立入りを止めなくていいレベルになるのか」「撮影中、自分が立つ位置の線量率はどれくらいか」「距離を変えたら露出時間はどう変わるのか」を、その場で素早く見積もりたい場面が頻繁にあります。このツールは点線源の逆二乗則を使い、基準距離での線量率から、別の距離での線量率・必要な安全距離・距離変更にともなう露出時間補正をまとめて計算します。RT撮影の作業計画、管理区域・立入禁止区域の境界設定の下準備、線源更新時の作業前評価などに使えます。
本ツールの結果はあくまで概算・目安です。実際の被ばく管理・区域設定は、電離放射線障害防止規則などの法令、サーベイメータの実測値、放射線取扱主任者や有資格者の管理に従ってください。最終判断は必ず公的基準と専門家へ確認してください。
迷いやすい点として、単位は入力どうしでそろえる必要があります(μSv/h と mSv/h を混在させない。1mSv=1000μSv)。また「許容線量率(h あたりの率)」と「許容線量(積算値)」は別物です。本ツールの安全距離は線量率どうしの比較で計算しています。
逆二乗則は、点線源から出た放射線が球面状に広がり、同じ量のエネルギーが距離の2乗に比例して広い面積へ薄まることから導かれます。したがって線量率は距離の2乗に反比例します。本ツールが使う3つの式は次のとおりです。
計算例1(線量率と安全距離):Ir-192線源で、1mの位置の線量率が 1,000μSv/h だとします。3m離れた位置の線量率は I₂ = 1,000 ×(1 / 3)² = 1,000 × 0.111 = 約111μSv/h。さらに、立入りを止めたい目標を 20μSv/h とすると、必要な安全距離は d = 1 ×√(1,000 / 20)=√50 = 約7.1m。つまり1m地点で1,000μSv/hの線源なら、20μSv/hに下げるには約7m離れる計算になります。
計算例2(露出時間補正):1mの位置で良好な写真濃度が得られる露出時間が 60秒だったとします。撮影距離(線源−フィルム間距離)を 1m から 1.5m に伸ばすと、同じ濃度を得るのに必要な露出時間は t₂ = 60 ×(1.5 / 1)² = 60 × 2.25 = 135秒。距離を1.5倍にしただけで、露出時間は2.25倍に増えます。距離を倍にすれば露出は4倍必要になるため、撮影距離を伸ばすと作業時間が一気に延びることが分かります。
基準距離での線量率(または露出時間)を1としたときの倍率です。距離を離すと線量率は急減し、露出時間は急増します。
| 距離比 d₂/d₁ | 線量率の倍率 (d₁/d₂)² | 露出時間の倍率 (d₂/d₁)² |
|---|---|---|
| 0.5倍(近づく) | 4.00倍 | 0.25倍 |
| 1倍(基準) | 1.00倍 | 1.00倍 |
| 1.5倍 | 0.44倍 | 2.25倍 |
| 2倍 | 0.25倍 | 4.00倍 |
| 3倍 | 0.11倍(≒1/9) | 9.00倍 |
| 5倍 | 0.04倍(=1/25) | 25.0倍 |
| 10倍 | 0.01倍(=1/100) | 100倍 |
Q. 距離を2倍にすると線量率はどれくらい減りますか?
A. 1/4(25%)になります。距離の2乗に反比例するため、わずかに離れるだけで大きく減らせます。逆に半分まで近づくと4倍になるので、不用意な接近は危険です。
Q. 撮影距離を伸ばすと画質はどうなりますか?
A. 線源−フィルム間距離(SFD)を伸ばすと幾何学的不鮮鋭度(Ug)が小さくなり鮮明になりますが、露出時間は距離の2乗で増えます。例2のように1.5倍で2.25倍の時間が必要です。鮮鋭度と作業時間・被ばくはトレードオフです。
Q. 逆二乗則はどんな条件でも成り立ちますか?
A. 点線源・空気中(散乱や空気吸収を無視できる範囲)が前提です。線源寸法に比べて十分遠い距離で成立します。線源に近すぎる距離、遮へい物がある場合、壁・床からの散乱線がある閉所では実測値とずれます。あくまで目安です。
Q. 単位はμSv/hでもmSv/hでもよいですか?
A. 入力どうしで単位をそろえれば、線量率・安全距離の計算はどちらでも一致します(線量率の比だけで決まるため)。1mSv=1000μSvです。なお安全距離は許容「線量率」と基準「線量率」の比から出している点に注意してください。
Q. この計算だけで管理区域の境界を決めてよいですか?
A. いいえ。境界設定は法令の定める基準(例:3月間の積算など)とサーベイメータの実測に基づいて行う必要があります。本ツールは事前のあたりづけ用であり、最終決定は放射線取扱主任者など有資格者の管理のもとで行ってください。