焦点寸法と距離からUgを自動計算(RT)
Ug = F × b ÷ a
(F:線源の焦点寸法、a:線源〜被写体間距離、b:被写体〜フィルム間距離)
Ugを小さくするには、焦点を小さく・線源距離を大きく・被写体をフィルムに密着させます。規格の許容値と併せてご確認ください。
放射線透過試験(RT)では、X線管やγ線源に「焦点寸法」という一定の大きさがあります。理想的な点線源なら影の輪郭はくっきりしますが、実際の線源には広がりがあるため、きずの像の縁に半影(ペナンブラ)ができてぼやけます。この縁のにじみ幅が幾何学的不鮮鋭度(Ug:geometric unsharpness)です。Ugが大きいと、細いきずや割れの先端が周囲に溶け込んで検出できなくなったり、寸法を実際より大きく読んでしまったりします。
「撮影距離をどこまで詰めて作業効率を上げられるか」「この配置で規格の許容Ugに収まるか」「焦点の大きい可搬型装置で薄板を撮るときの限界はどこか」——現場の放射線作業従事者やRT技術者、RT2・RT3の受験者がぶつかるこうした判断を、このツールは焦点寸法と2つの距離を入れるだけで即座に数値化します。撮影前のセッティング検討や、過去問の検算に使ってください。
迷いやすい点:bを「フィルムに最も近いきず」で取るか「線源に最も近いきず(=試験体厚さ全体)」で取るかで値が変わります。安全側(Ugが大きく出る側)に評価したいときは、線源側の表面、つまり試験体厚さtをbに入れてください。多くの規格はこの最悪条件で許容値を定めています。
幾何学的不鮮鋭度は、相似三角形の関係から次の式で求めます。
Ug = F × b ÷ a
F:焦点寸法、a:線源〜被写体間距離、b:被写体〜フィルム間距離
焦点が大きいほど、また被写体がフィルムから離れる(bが大きい)ほどぼけは増え、線源を遠ざける(aが大きい)ほどぼけは減ります。
計算例1:標準的なX線撮影
F=3mm、a=600mm、b=20mm のとき
Ug = 3 × 20 ÷ 600 = 60 ÷ 600 = 0.10mm
0.1mm前後は一般的な溶接部RTで十分に良好な値です。
計算例2:距離を詰めて効率を上げた場合
同じF=3mm、b=20mmで、撮影距離を半分のa=300mmにすると
Ug = 3 × 20 ÷ 300 = 60 ÷ 300 = 0.20mm
距離を半分にするとUgはちょうど2倍に悪化します。露光時間は距離の二乗則で約1/4に短縮できますが、鮮鋭度を失う点に注意が必要です。
被写体〜フィルム間距離 b=20mm に固定した場合のUg(mm)の目安です。
| 焦点F\距離a | 300mm | 600mm | 1000mm |
|---|---|---|---|
| 1mm | 0.07 | 0.03 | 0.02 |
| 2mm | 0.13 | 0.07 | 0.04 |
| 3mm | 0.20 | 0.10 | 0.06 |
| 4mm | 0.27 | 0.13 | 0.08 |
表から、距離を伸ばす効果と焦点を小さくする効果がともにUgを直線的に下げることが読み取れます。bが20mmより厚い試験体では、表の値を比例倍してください(例:b=40mmなら表の2倍)。
Ugの許容上限は適用規格と試験体の公称厚さで段階的に決まります。JIS Z 3104(鋼溶接継手のRT)などでよく示される考え方の目安は次の通りです。実際の合否は必ず該当規格の本表で確認してください。
| 試験体の公称厚さ | Ug許容値の目安 |
|---|---|
| 約25mm以下 | 0.25mm 程度以下 |
| 約25〜50mm | 0.40〜0.50mm 程度以下 |
| 約50mm超 | 0.70mm 程度以下 |
薄い試験体ほど許容Ugは厳しく(小さく)なります。これは薄板では検出すべききずも微細であり、わずかなぼけが致命的になるためです。
Q. aとbは具体的に何を測ればいいですか?
A. aは線源からきずのある面(線源側の試験体表面)まで、bはその面からフィルムまでの距離です。試験体をフィルムに密着させる通常配置では、bはほぼ試験体厚さに等しくなります。撮影距離SFD=a+bの関係も覚えておくと検算に便利です。
Q. Ugを小さくする一番効きやすい方法は?
A. 手段は3つで、(1)焦点寸法Fの小さい線源・装置を使う、(2)撮影距離aを伸ばす、(3)試験体をフィルムに密着させてbを小さくする、です。bは試験体厚さで下限が決まり詰めにくいため、現場では「aを伸ばす」が最も実用的な調整になります。
Q. 焦点が大きいγ線源(Ir-192など)で薄板は撮れますか?
A. 撮れますが、焦点が大きいぶんUgが悪化しやすいので、撮影距離を十分に取る必要があります。本ツールでF・a・bを入れて許容値内に収まるか事前に確認してください。
Q. Ugがゼロにはできないのはなぜですか?
A. 焦点寸法Fが有限である限り、式 Ug=F×b÷a の分子はゼロになりません。点線源(F=0)は現実には存在しないため、Ugは小さくできても完全にはなくせません。だからこそ配置の最適化が重要になります。
Q. 像の全体的なボケはUgだけで決まりますか?
A. いいえ。フィルムや増感紙に由来する固有不鮮鋭度Uiも加わります。総合不鮮鋭度は概ね √(Ug²+Ui²) で見積もれます。Ugを下げすぎてもUiが支配的なら像はそれ以上シャープになりません。
本ツールおよび本記事の数値・許容値は概算・目安です。実際の撮影条件の決定や合否判定は、適用規格の本文・表と、有資格者(RT技術者・放射線取扱主任者など)の判断に従ってください。